ミニピルについて
低用量ピルに含まれている「卵胞ホルモン(エストロゲン)」を含まず、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを含有しているピルを、「ミニピル」といいます。
ミニピルは、従来の低用量ピル(OC/LEP)に比べて血栓症のリスクが低減されていることから、これまでピルの処方ができなかった方も使うことができ、正しく服用すれば低用量ピルと同等の避妊効果が期待できるのが大きな特徴です。
避妊の必要がある女性にとって、男性まかせでなく、ご自身でコントロールできる避妊方法の選択肢が増えることは画期的なことであり、自分の身体を守るための大きな安心につながります。
さらに、低用量ピルと同様に、月経困難症や子宮内膜症などの生理に関するトラブルを軽減する副効用も期待できることから、ミニピルは女性の生活の質(QOL)を高める有効な薬と言えます。
ミニピルとは
通常の低用量ピルには、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が一緒に配合されているのに対し、ミニピルは、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみが配合されています。エストロゲンを含んでいないことから、「Progestogen-Only Pill(プロゲストーゲン・オンリー・ピル)」、略してPOP(ポップ)と呼ばれることもあります。
ミニピルの場合、低用量ピルと違いエストロゲンの影響を受けないので、血栓症(血管の中で血液が固まり、血液の流れを止めてしまう病気)のリスクを大幅に軽減することが可能です。
そのため、喫煙者や血圧が高めの方など、これまで低用量ピルを使うことができなかった方も含めて、より多くの女性が使用できるようになりました。
ミニピル処方に適した方(通常の低用量ピルの処方が適さない方)
以下のような方は、血栓症のリスクが高く、通常の低用量ピルの処方ができないことから、ミニピルの処方を行っております。
- 喫煙者(35歳以上で1日15本以上)
- 重度の高血圧症
- 前兆(閃輝暗点、星型閃光など)を伴う片頭痛がある人
- 血栓症のリスクが高い人
- 心臓疾患がある人(心臓弁膜症の一部など)
- 40歳以上
- 肥満の方(BMI30以上)
※その他、医師の診断により、ミニピルの処方を行う場合もあります。
ミニピルの効果
ミニピルを正しく服用すると、低用量ピルと同等の高い避妊効果(99%以上)が期待できます。
低用量ピルが排卵を起こさないようにして妊娠を予防するのに対し、ミニピルの場合は原則として排卵は起こるとされていますが、当院のデータでは、きちんと服用している方で排卵が起きたケースはほぼありませんでした。
ただ、ピルよりもシビアに飲み忘れや服用の間隔が空いてしまうと薬の効果がなくなり妊娠することがあるので、正確に服用時間を管理して、毎日決まった時間に服用する必要があります。
また、ミニピルには、低用量ピルと同じように避妊効果以外の副効用も期待できます。
主成分である黄体ホルモンの作用により、月経を人工的に起こさないようにするため、月経困難症(生理痛など)や子宮内膜症を改善する効果があるほか、子宮体がんの予防効果も期待されています。
ミニピルを導入した背景
40代以降は心血管系障害のリスクが上がるため、低用量ピルは慎重に使うよう「ガイドライン」で定められており、当院でも、十分適応を見極めた上で処方を行っておりました。
ところが、2014年初旬から、超低用量ピル「ヤーズ配合錠」による血栓症の死亡例が相次ぎ、低用量ピルの処方基準が見直されると、40歳以上には一律にピルの処方をしないという過度な対応をする医療機関が相次ぎました。その結果、40代でピルの服用歴がある方がご自分の身体を守ることができなくなり、人工妊娠中絶手術を受けるという症例が数件続いたことから、当院では2015年5月に「ミニピル」の導入を決めました。
ミニピルは、40歳以上でも安心してお使いいただける薬で、海外では当たり前のように処方されています。しかし、国内では、まだ避妊目的として承認されていないことから、当院では、生理不順や月経痛、子宮内膜症の治療などに広く使われている黄体ホルモン剤もしくは外国製のミニピルを処方しております。
ミニピル使用方法
ミニピルは、生理の始まった日から飲み始め、一日一錠を決まった時間に毎日飲み続けます。休薬期間を設けず365日飲み続けるのが、低用量ピルとの大きな違いです。
卵胞ホルモン(エストロゲン)が含まれていないため、自然に生理が来ますが、生理期間中も服用を続け、1シート飲み終わった後、29日目からはすぐ次の新しいシートを飲み始めてください。
ミニピルは、毎日同じ時刻に確実に服用することが重要です。3時間以上ずれると、ミニピルの効果が失われてしまい、避妊していない時と同じように妊娠する可能性があります。また、不正出血の原因にもなるため、アラームを利用するなどして、正確な時間管理を行うようにしましょう。
ミニピルは、避妊を継続したい期間はずっと飲み続ける必要があります。長期の服用になるため、必ず、医師の指示に従って服用するようにしてください。
ミニピルの副作用
ミニピルは安全性が高く、副作用の少ない薬剤ですが、含有するホルモン量が少ないため、不正出血が起こりやすいという特徴があります。
飲み始めの数か月間は、多くの方に不正出血がみられるほか、服用時間がずれた時などにも出血が起きやすくなります。出血が続くと煩わしいですが、特に体に異常が起きているということではなく、避妊効果が低下することもありませんのでご安心ください。
そのまま服用を継続しているうちに徐々に慣れ、気にならなくなることが多いです。
また、休薬期間を設けないことから、生理(消退出血:しょうたいしゅっけつ)がなくなることもあり、身体への影響を心配される方もいらっしゃいますが、特に問題はありません。(人によっては不定期に少量の出血が起きる方もいます。)
その他、人によっては吐き気や嘔吐、頭痛、乳房の痛み、気分不良、不安感、イライラ感などが起こる場合がありますが、こちらも服用しているうちに慣れてくると症状が改善されることが多いです。
副作用など、服用中に何か気になる症状が現れた時は、お気軽にご相談ください。
ミニピルの費用
当院でミニピルの処方にかかる費用は、1か月(28錠)で3,400円(税込)です。
避妊目的で使用するため、保険適用はなく、全額自費治療となりますのでご了承ください。
また、初回の診療に限り、相談料・処置料として、別途3,200円(税込)をいただいております。
低用量ピル&ミニピルの比較
低用量ピル(OC/LEP) | ミニピル(POP) | |
---|---|---|
含有ホルモンの種類 | 卵胞ホルモン(エストロゲン) 黄体ホルモン(プロゲステロン) |
黄体ホルモン(プロゲステロン) |
排卵の有無 | なし | あり |
避妊率 | 正しく服用した場合、99%以上 |
薬の効果自体は若干低いが、規則正しい服用で低用量ピルと同等の避妊効果が期待できる |
血栓症リスク | 低い ※高度な肥満、喫煙などはリスクが高まる |
ほぼない ※血栓症の既往歴のある人は控える |
休薬期間 |
あり(一部、連続服用可能なものや、飲み忘れ防止のため、偽薬を飲むタイプの薬もあり) |
なし(避妊中は365日飲み続ける) |
1ヶ月あたりの費用 (※当院の場合) | OC(自費診療):2,100~2,400円 ※初診時に別途3,200円要 LEP(3割負担の場合):初診1,840~3,370円 再診1,350~2,880円 |
3,400円(税込) ※初診時に別途3,200円要 |
よくある質問
避妊効果はいつから期待できますか?
生理開始日から5日目までに服用を開始した場合、飲み始めの1日目から避妊効果が期待できます。それ以外の日に始めた場合は、服用開始1週間後から、避妊効果が期待できます。最初の1週間までは、妊娠の可能性があるため、忘れずにコンドームなどの他の避妊方法を併用するようにしましょう。
ミニピルを飲み忘れた時はどうすれば良いでしょうか?
飲み忘れに気が付いたら、その時点ですぐに1錠を服用してください。次の1錠は通常の服用時間に飲んでいただいて構いません。
また、24時間以上、飲み忘れてしまった場合には、気付いた時点で2錠服用し、次の一錠はいつも通りの時間に飲んでください。
ミニピルは12時間以上ずれると、避妊効果がなくなります。飲み忘れた後1週間はコンドームなどの他の避妊法を併用するようにしましょう。
ミニピルを服用後、嘔吐してしまいました。薬の効果は持続しますか?
内服後、2時間以内に嘔吐をした場合は、避妊効果が落ちやすくなりますので、追加で1錠内服してください。その次の服用はいつも通りの時間に服用していただいて構いません。いずれにしても服用を継続することが大切です。
ミニピル服用中に内科で処方された風邪薬や胃腸薬を飲んでも大丈夫ですか?
一般的な風邪薬や胃腸薬がミニピルに影響を与えることはありません。安心して服用していただいて大丈夫です。
ミニピル服用後、ずっと不正出血が続いています……。
ミニピルの服用中は不正出血がつきものです。出血が止まるのが理想ですが、出血があっても身体に害があるわけではなく、避妊の効果も変わらないので、継続して服用していただいて構いません。どうしても煩わしい時には、一時的に休薬する方法もありますのでご相談ください。
まとめ
ミニピルは、海外では日常的に使われているにもかかわらず、日本では未承認のため、まだあまり知られていないのが実情です。
しかし、年齢や血栓症リスクの他、さまざまな理由で低用量ピルを使用できない女性も多いことから、当院では有効な避妊法の一つとしてミニピルの処方を行っております。
避妊はもちろんのこと、生理にまつわるトラブルを改善し、女性の皆さんが、快適に過ごしていただけるよう、それぞれの患者様に適した処方を行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。